遺産分割
遺産分割の手続き
- 遺言で
- 被相続人が遺言で分割方法を指定しているときは、その指定に従って分割します。
- 協議で
- 遺言がない場合や、遺言書とは異なる分割方法を希望する場合、相続人の全員の合意によって、話合いで分割方法を決めます。
- 調停
審判で - 協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の手続きを利用することになります。審判手続きにおいては、家庭裁判所が、法律に従って分割方法を定めます。
遺産分割の流れ
遺産分割は、実際には、以下のような流れで進めていくことになります。
いつまでにしなければならないという期限が定められているわけではありませんが、相続税の申告・納税の期限が10か月以内とされていることから、これが一つの目安になると思います。
- 遺言書の有無の確認
↓ - 相続人の確認
↓ - 遺産(債務を含む)の確認
↓ - 遺産の金額の確認
↓ - 具体的な分割方法の確認
↓ - 遺産分割協議書の作成
相続人
相続人の範囲は、法律により定められています。
遺産分割は、相続人全員の合意で行う必要があるため、亡くなられた方の生まれてから死ぬまでの戸籍により、具体的な相続人の範囲を確認する必要があります。
いわゆる「古い戸籍」として、「除籍」や、「改製原戸籍」等を確認する必要がある場合があります。
当事務所にお任せいただければ、まずはこのような戸籍の確認から始めさせていただきます。
相続財産の範囲
亡くなられた方の全ての財産を確認する必要があります。
財産の種類としては、以下のようなものが考えられます。
- 現金、預貯金
- 生命保険金(受取人未指定の場合等)
- 死亡退職金(退職金規定の定め方によっては、「遺産」ではなく、「遺族固有の権利」と考えられる場合もある。)
- 株券、社債、国債等
- 損害賠償請求権、その他の金銭請求権
- 土地、建物
- 自動車
- その他動産(貴金属、着物、家財道具等)
また、借金、支払債務等のマイナスの財産も相続の対象であることに注意が必要です。
プラスの財産よりもマイナスの財産が多いときは、相続放棄の手続きも検討しなければなりません。
相続財産の評価
必ず必要なわけではありませんが、公平な遺産分割を行うために、相続財産の金額を改めて評価しなおすことがあります。
- 土地・建物
-
- 時価(実勢価格)
- 公示地価(公示価格)
- 相続税評価額(路線価)
- 固定資産税評価額
- 自動車、
その他動産 - 時価で評価。
- 自動車の場合は、中古市場の価格等。
- 宝石・貴金属などは、取引相場価格等。
- 未公開の
株等 - (亡くなられた方が法人を経営されていた場合等)
- 類似業種比準方式
- 純資産価格方式
- 併用方式
- 配当還元方式
相続分
具体的に相続する額は、遺産×法定相続分(割合)ですか?
消極財産(債務)については、その通り。 → 遺産である債務×法定相続分
しかし、積極財産(プラス財産)については、さらに「特別受益」や「寄与分」の修正を行って「具体的な相続分」を算出するので、そう単純ではない。
遺産分割協議においては、これに縛られず、自由に遺産を分割することができます。
ただし、「公平な分割」というためには、このような相続分について配慮することが必要といえるでしょう。
特別受益
共同相続人の中に、被相続人から遺贈(遺言による贈与)や生前贈与を受けたりした者がいた場合に、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けるとすれば、不公平になる。
そこで、民法は、共同相続人間の公平を図ることを目的に、特別な受益(贈与)を相続分の前渡しとみて、計算上、贈与を相続財産に持戻して(加算して)相続分を算定することにしている(民903条)。
- 「みなし相続財産」
= 相続開始の時に現存する積極財産
+ 相続人が受けた贈与(相続分の前渡しと評価されるもの) - 「みなし相続財産」を基礎にした上で、各共同相続人の相続分を乗じて各相続人の相続分(一応の相続分)算定し、特別受益を受けた者については、この額から特別受益を控除し(理由:既にもらっているから)、その残額をもって特別受益者が現実に受くべき相続分とする。
- 特別受益の種類 ~ どんなものが特別受益にあたるの?
- 遺贈
遺贈とは、遺言によって遺言者の財産の全部又は一部を無償で相続人に譲渡すること。
遺贈は、その目的にかかわりなく、包括遺贈も特定遺贈もすべて特別受益となる(民903条)。 - 生前贈与
- 婚姻又は養子縁組のための贈与
- 学資
- その他の生計の資本としての贈与
- 居住用の不動産の贈与又はその取得のための金銭の贈与
- 開業・営業資金の贈与
- 借地権の贈与
- 居住用の不動産の贈与又はその取得のための金銭の贈与
- 婚姻又は養子縁組のための贈与
- 遺贈
寄与分
共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与(通常期待される程度を超える貢献)をした者があるときに、相続財産からその者の寄与分を差し引いたものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって、その者に相続財産のうちから相当額の財産を取得させ、共同相続人間の公平を図る制度である(民904条の2)。
被相続人が相続開始時に有していた財産の価額から寄与分額を差し引いた計算上の財産を「みなし相続財産」とする。
分割方法
以上のような事情を加味して算出される各相続人の相続分を一応の前提としつつ、具体的にどの遺産をどのように分けるのかを決めることになります。
相続分に拘らずに分割する場合や、現金・預貯金のように相続分に応じた分割がしやすい財産のみであれば、分割協議は比較的容易に進むでしょう。
遺産として、450万円の土地①②の二筆の土地があるときに、相続分を基準にしてXY間で遺産分割を行うような場合は、以下のような分割方法のいずれかを選択することになります。
- 現物分割
- 財産の性質・形状を変更せずに分割する方法。
①土地をXに、②土地をYに取得させる等。 - 代償分割
- 一部の相続人に財産を取得させた上で、他の相続人に対する債務を負担させる方法。
計900万円の①②土地をXに取得させる代わりに、XがYに対して450万円を支払うとする等。 - 換価分割
- 遺産を換価して分割する方法。
①②土地を900万円で売却し、その900万円をXとYが450万円ずつ分けるとする等。 - 共有分割
- 財産を共有とする方法。
①②土地をXYが持分1/2ずつ共有とする等。
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