遺言
なぜ遺言書を残しておく必要があるのですか?
- 相続人が争うのを防止するため
遺言書を作っておけば、相続人らは遺産分割協議を行う必要がなくなり、相続人同士でもめ事が少なくなる。
最近では、遺産が数百万円でももめる事案が多くなっている。
遺産のことで相続人が骨肉の争いを行うと、人間関係が破壊され不仲となりやすい。 - 相続人等の手続的負担を軽くし、遺産をスムーズに承継するため
遺言書がなければ、家族は遺産分割協議が整うまで銀行から預金を引き出せない。しかし、遺言書があればスムースにいく。
また、戸籍謄本等の相続人証明書類の提出など、面倒な手続きを省略できることがある。 - 相続人の誰かに、特定の遺産を相続させるため
遺言書がなければ、他の相続人全員の承諾がない限り、希望した遺産を相続できない。
特に、農家や会社経営者の事業承継などで便利。 - 相続人の誰かに、法定相続分よりも多めに残すため
遺言書がなければ、他の相続人全員の承諾がない限り、法定相続分の割合でしか相続できない。
- 相続人以外の人に遺産を分けたいとき
お世話になった方や施設、またどこかの機関等の寄付したい場合など、相続人以外の者に死亡後に遺産をあげたい場合は、遺言書でない無理!
遺言能力
遺言能力があるうちに、早めに作成する。
遺言の種類
当事務所では、以下のメリットを踏まえ、公正証書遺言の作成をオススメしています。
- 自筆証書
遺言 - 遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書し、押印することによって成立する。
加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつその変更場所に押印しなければならない。
安価だが、リスクを伴う。
* 費用はかからないが、偽造の恐れや紛失や破棄によって実現されない危険がある。また、方式が厳格であり無効となりやすく、また筆跡などで争いが生じやすい。
* 公正証書遺言以外の遺言は、遺言書の保管者・発見者は、被相続人の死亡後、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して検認(遺言書の形状確認と現状保存手続き)を受けなければならない。遺言の効力に影響はないが、5万円以下の過料に処せられる場合がある。
- 公正証書
遺言 - 証人2人以上の立会のもと、遺言者が口述した遺言内容を公証人が筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせて、承認を得た後、各自に署名、押印してもらい、公証人が法定の方式に従って作成された旨付記して、署名押印して完成するもの。
遺言書原本は公証役場で保管され、本人には正本や謄本が交付される。
公正証書遺言の有無は、公証役場で照会できるので、遺産を受け取る者(受遺者)にとっても安心。
費用はかかるが、無効になりにくく、紛失や破棄の危険がない。また、検認手続は不要であり、簡単に遺言内容を実現できる。だから、より確実な公正証書遺言がオススメです。
* 公証人手数料は、遺産の額によって異なる。
例えば、1000~3000万円であれば
43,000円+正本・謄本代(1枚250円)+出張日当代(4時間以内10,000円) - 秘密証書
遺言 - 遺言内容を秘密にしつつ、公証人に関与してもらって作成する遺言。
公証人にもその遺言の内容を秘密にするため、遺言の要件を確認できず、確実性がないことから、ほとんど利用されていません。 - 特別方式
遺言 - 普通の方式での遺言が不可能な危急な状態においてする遺言。
遺言の内容
遺言書には、「誰に」、「どの財産を」、「どのように」残すかを記載することができます。
これによって、遺言者の想いを反映させることができます。
また、相続人以外の者に対して、遺産を与えることもできます(遺贈)。
民法上、以下のような事項について、遺言により定めることができるとされています。
- 推定相続人の廃除(民法893条)、排除の取消し(民法894条)
- 相続分の指定(民法902条)
- 特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
- 遺産分割方法の指定、遺産の分割の禁止(民法908条)
- 担保責任(民法914条)
- 遺贈(民法964条)
- 子の認知(民法781条2項)
- 未成年後見人の指定(民法839条1項)、未成年後見監督人の指定(民法848条)
- 祭祀主催者の指定(民法897条1項)
- 特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
葬儀、墓、供養の希望も書いておくことをオススメします。
遺言執行者
遺言の中で遺言執行者を指定しておく。
遺言の撤回・取消
一度遺言書を作ったとしても、いつでも方式に従って、その全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。
また、以下のような場合には、遺言が撤回されたものとみなされます。
- 前の遺言が後の遺言と抵触するときの、その抵触する部分(民法1023条1項)
- 遺言が遺言後の生前処分等と抵触する場合の、その抵触する部分(民法1023条1項)
- 遺言者が故意に遺言書を破棄したときの、その破棄した部分(民法1024条前段)
- 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときの、その破棄した部分(民法1024条後段)
遺留分
遺留分とは、被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人(遺留分権利者)に留保されていて、被相続人(遺言者)による自由な処分(贈与、遺贈)に制限が加えられている持分的利益をいう。
→ イメージとしては、「一定の相続人の最低限度の取り分」
第三者に残したり、相続人の誰かに多めに与える場合は、相続人の遺留分を侵害しないようにする。
- 遺留分権を有する相続人は誰か?
被相続人の配偶者、子、直系尊属
* 兄弟姉妹には遺留分はない(民1028条)。
→ 子や親のいない夫婦の場合、一方の配偶者に対して自己の財産を相続させる旨の遺言を互い残しておくと安心! - どの程度の持分的割合が保障されるのか~遺留分の割合(遺留分率)は?
- 基本的算定式個別的遺留分 = 総体的遺留分×法定相続分
- 総体的遺留分 = 遺留分権利者全体に残されるべき遺産全体に対する割合
- 直系尊属のみが相続人である場合
→ 被相続人の財産の1/3(民1028条1号)
- それ以外の場合
→ 被相続人の財産の1/2
- 直系尊属のみが相続人である場合
- 個別的遺留分 = 総体的遺留分の割合に法定相続分の割合を乗じたもの
要するに、総体的遺留分のうち、その遺留分権利者(相続人)の法定相続分に相当する割合のこと。
例えば、夫が死亡し、妻と子AB2人が相続する場合の各相続人の遺留分率は?妻=1/2×1/2=1/4
子A=1/2×1/4=1/8
子B=1/2×1/4=1/8
- 遺留分を侵害する遺言がなされたらどうなるの?
例えば、上記の例で、夫が子Aに全財産を相続させる遺言書を作り死亡した場合、遺留分を侵害する遺言がなされても当然に無効とはならず、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき遺言のあったことを知った時から1年以内に、その遺産をもらった者(相続人、第三者)に対して遺留分減殺請求をして初めて、その遺言は遺留分を侵害している限度で失効する。
→ 目的物上の権利は、その範囲で、当然に遺留分権利者に復帰する。不動産のようにすぐに分割できない権利の場合は、受遺者と遺留分権利者との共有状態となってしまう。
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